はかまどトピックス
2016/06/16
石材店からみた「お墓のデザイン・墓碑銘大研究」 その(2)

◆ 墓碑銘にもさまざまなバリエーションが
「墓碑銘」とよく言いますが、広辞苑第五版によると、「墓碑銘」とは、「墓碑に彫り込んだ死者の経歴・事績などの文句。エピタフ」とあり、「墓碑」とは、「死者の氏名・戒名・没年月日・事績などを彫り込んで墓標として立てる石。墓石」とあります。これから、広義に解釈すると、墓石に刻む文字はすべて「墓碑銘」ということになります。 ただ、一般的なイメージとしては、墓碑銘と言った場合、故人の愛した言葉や座右の銘、生前の作品の一部といったところでしょうか。その意味では、墓碑銘とは、作家・俳優・政治家など、有名人の専売特許、しかもデザインに凝った欧米のお墓に固有のものというイメージが強いかもしれません。デザイン墓にとって、墓碑銘は重要な要素で、日本でも、墓碑銘入りの墓が増えてきました。そこで、「墓石に刻まれる文字~墓碑銘」には、どんなものがあるのか、分類・整理して見てみましょう。
1.「○○家之墓」「先祖代々之墓」など
2.「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」、聖書の言葉など
3.「夢」「愛」「慈」など漢字1文字
4.「自然」「無限」「一期一会」など2~4字の漢字による熟語
5.「花こぼれてなほ薫る」などひとつの句になった言葉
6.故人が生前に愛したり残した言葉・作品(俳句・詩ほか)
7.親戚・友人らによる故人への弔辞
ざっと見て、1・2の伝統的なものから、3・4のタイプが増えつつあり、今後は、5~7が増えていくように感じられます。3・4は無難といえば無難ですが、同じ墓地内で、「愛」など同じ言葉が並ぶケースも出始めているようで、その意味では、故人らしさ・オリジナリティは、今となっては、弱くなってきています。
最後に、墓碑銘を考える参考となるように、なるほど、と思わせる具体例をいくつか集めてみました。もっと知りたい方は、墓碑銘だけは抜き出されていませんが、 「世界恩人墓巡礼」というびっくりホームページがありますので、その写真から、有名人の墓碑銘を探すことができます。
・「無」(映画監督の小津安次郎)
・「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」(ラグビー大ファン)
・「山は黙して語らず されど内にて深き想いあり」(山好き)
・「ゆっくり休んでね・・・ 私たちはいつも一緒です」(早逝した娘に)
・「ここに医師リチャードが眠る。この霊園に眠る死者の半分は彼の患者だった」(欧米での実例)
・「この沈黙の石の下に眠るものは騒がしい老齢の未婚女性 彼女は揺りかごから墓場まで話しつづけ息がきれることがなかった」(よくしゃべる老女の墓の実例)
・「笑われて 妻子養う 道化もの」(コメディアンの玉川良一/自作の句より)
・「人生の最後まで演じきった」(俳優のイングリッド・バーグマン/本人の希望によるもの)
・「アリゴ・ベイル ミラノ人 書いた 愛した 生きた」(フランスの作家スタンダール/出身はイタリアであることも記している)
・「全国の労働者よ団結せよ。哲学者たちはただ世界をいろいろな風に解釈してきた。だが、世界を変革することこそが大事なのだ」(ドイツの経済学者カール・マルクス)
・「アメディオ・モディリアーニ 画家 1887年7月12日リボルノに生まれ 1920年1月24日パリに死す 栄光に到達せんとした時 死が彼を捉えた」 (友人によるもの。ちなみに、違う訳では「生涯を終えしまさにそのとき栄光来たりぬ」となっている)
お墓に刻む文字には、法律を含め、原則としてとくに制約はありません(ただし、寺院墓地やデザイン墓石禁止の霊園などは、そこでのルールに基づきますので要確認です)。ですから、お墓を新たにつくる予定の方は、早くから自分の墓碑銘を考えてみるのも、遺言よりも気軽に考えやすく、残りの人生を有意義に過ごすためにもいいと思います。石材店に相談するもいいでしょう。
広報委員会 上野國光
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和型のお墓によくみられる墓碑銘