はかまどトピックス
2016/06/15
石材店からみた「お墓のデザイン・墓碑銘大研究」 その(1)

◆ 和型から洋型、そしてデザイン墓へ
昔は、お墓といえば、四角柱状の「和型」のお墓が主流でした。しかし、近年、西欧の墓地に見られるような板状で背が低い洋風の「洋型」のお墓が増えてきています。寺院墓地は別として、民間霊園では、すでに「和型」より「洋型」の方が多くなったともいわれています。
さらに、増えつつあるのが、いわゆる「デザイン墓」です。これには、従来タイプのお墓に、ちょっとしたデザイン・意匠を施したものから、とてもお墓とは思えず、まるでモニュメントのようなものまでさまざまです。その意味で、一口で「デザイン墓」といっても、くくり切れないほどバリエーションがありますが、大きくは2つに大別できると思います。
ひとつは、レディメイドの「デザイン墓」であり、もうひとつは、オーダーメイドの「デザイン墓」です。前者は、石材店などが、すでに多少デザインを施してユニークさを出した既製品のお墓を選ぶのに対し、後者は、要望を出して、それに応じてオリジナルにデザインして制作してもらうものです。前者の場合、他にも購入した人がいた場合、同じデザインのお墓が他にも出てきますが、後者は、世界にひとつのお墓になります。
いずれにせよ、広い意味で「デザイン墓」といった場合、レディメイド、オーダーメイド両方が含まれ、狭い意味でいった場合は、オーダーメイドのみという気がします。ただ、「デザイン墓石」に加えて「ニューデザイン墓石」という表現もあり、ニュアンスとしては、それぞれレディメイドとオーダーメイドに対応しているようにも思えますが、石材店業界的には、いずれもはっきりとは定義されずに使われているようです。
◆ デザイン墓を構成する要素/形・材質・彫り物
ここで、デザイン墓がデザイン墓といえる要素を整理してみたいと思います。大きく分けて、3つあると思います。ひとつ目は形です。和型のお墓では、あまりデザイン墓にした例はありませんが、花立てや香炉などに凝ったものは見受けられます。洋型は、もともと形は必ずしも一定ではありませんでしたから、板状をベースに、さまざまに工夫ができます。さらに、モニュメントのような、従来のお墓のイメージを脱して自由にデザインすることもできます。
2つ目は材質です。デザイン墓とはいえ大半は石材ですが、なかには、ステンドグラスをはめ込んだもの、陶板などをはめ込んだものもあり、さらには、「光り墓」(ひかりぼ)というお墓全部がガラスの「ガラスデザイン墓」も登場しました。 3つ目は彫り込んだり貼り込んだりするもの(文字・絵・イラスト・図案・写真など)です。よくあるのが絵やイラストなどビジュアル要素をレリーフ(浮き彫り)などにして彫り込んだお墓です。しかし、文字だけでも、既製品の洋型の墓に、ユニークな墓碑銘を彫り込めば、それもデザイン墓といえるでしょう。実際、デザイン墓では、「〇〇家の墓」と彫られている例は稀で、「愛」「空」といったシンボリックな言葉や味のある墓碑銘が彫られています。その意味で、デザイン墓にとって、形・材質以外にも、何を彫って見せるかは、とても重要な要素だといえます。
(お墓のデザイン・墓碑銘大研究 その(2)へ続く)
広報委員会 上野國光
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一般的な洋型のお墓